ヘパリン置換(ヘパ化)を行う患者さんが時々入院してくることがあります。
しかし、たまになのでよく理解をしないままヘパリンを投与してしまったりすることもあるかもしれません。
薬理学も関わりややこしそうに思えますが、理解できればとても簡単です。
看護学生さんや新人看護師さん向けに解説します。
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ヘパリン置換とは
抗血栓薬の代わりにヘパリンを術前投与すること。
血液サラサラになるお薬を使用していると、手術中の出血リスクが高くなるので抗血栓薬は術前中止する必要があります。
しかし、中止してしまうと今度は休薬期間中の血栓塞栓症の発症リスクが高まります。
そこで代わりにヘパリンを投与して、休薬期間を最小限にしようという治療法です。
ワルファリン内服患者さんが良く行う治療法だよ。
ヘパリンを投与する理由
なぜ「ワルファリンの代わりにヘパリンなのか」は、薬の作用発現時間と、効果持続時間をみれば一目瞭然です。
ここで、検査データについて簡単におさらいしましょう!
凝固因子には血管内で働く内因系と血管外で作用する外因系があります。
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
APTTは、内因系の血液凝固能力を測定する検査。
内因系血液凝固因子の不足や機能低下でAPTTが延長する。
基準値は25~40秒
高い場合:DIC、ビタミンK欠乏、重度肝障害、ワルファリン等内服時
PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)
採取した血液が、凝固までに要する時間を測定する検査。
外因系の凝固因子の働きを測定する。
正常値:1.0
延長時(高いとき):ワルファリン内服中、ビタミンK欠乏、肝不全、凝固因子の欠損症
なぜヘパリンを使うのか。ヘパリンとワルファリン(ワーファリン)の作用持続時間をみれば一目瞭然です。
ヘパリンは、血中半減期が短く術前4~6時間前の投与中止で抗凝固作用はほとんど消失します。ワーファリンは3日前に投与中止する必要があることを考えれば、ヘパリンの方が休薬期間を短く抑えられ、血栓塞栓症のリスクを最小限にできます。
また、プロタミン硫酸塩の投与で術前にヘパリンの効果を中和でき、コントロールしやすい薬剤なのです。
そして手術終了後に止血を確認したら、ヘパリンを再開します。
手術が終わったのだから、ワルファリンでいいのでは?と思うかもしれません。
しかし、作用発現時間を見てください。
ワルファリンから開始をすると作用発現までに時間がかかるのに対し、ヘパリンは注射であるため、直後から効果が出現するのを確認できます。
そのため術後はヘパリンからの再開となります。
その後は施設によってヘパリンを止めてワルファリンを再開したり、ワルファリンの効果が正常になるまでヘパリンを併用したり、といったスケジュールとなります。
ちなみにヘパリンナトリウム注は1万単位で10ml
シリンジポンプで少量ずつ投与します。
単位が重要な薬剤で生食とミキシングして投与します。
間違えると危ないのでWチェックしてもらいます。
血液サラサラのお薬なので出血の有無を観察しましょう。
まとめ
- ヘパリン置換は、ワルファリンカリウムをヘパリンで代替する
- ワルファリンとヘパリンの、作用発現時間と持続時間の差を利用した治療法
- 術後は出血などに注意
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